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Schönen Tag! 〜ドイツ暮らしエトセトラ〜 Vol.9
【ドイツ人の健康を支えるハイルプラクティカーってどんな人?】


 

こんにちは。

突然ですが、みなさんは体の不調を感じたときにどうしていますか?
ナチュラルメディスンの考えが広く知られるようになり、ハーブやアロマなど植物の力を使ったアプローチを試みる方もいるかと思います。しかし「何かあればまずは病院!」という考えがまだまだ一般的ではないでしょうか。
ここドイツでは医者とは別に、日々の健康を支えてくれる専門家が存在します。その名は「ハイルプラクティカー(Heilpraktiker)」。直訳すると「治療を行う人」という意味になりますが、日本では「自然療法士」として紹介されることも多いようです。
 


 

■ハイルプラクティカーとは
 

ドイツでは毎日128,000人がハイルプラクティカーの元を訪れているというデータもあるほど。医師以外で唯一、病気の診断と治療を行うことが認められている国家資格であり、主に自然療法を中心とした代替医療の治療を行います。
元々、民間で個々に行われていた自然療法や伝統療法をハイルプラクティカー法で統合したため、対象となる分野は多岐にわたります。



撮影:神木桃子


ドイツの伝統療法であるホメオパシーやハーブ療法だけでなくアロマテラピー、カイロプラクティック、鍼灸、指圧など他の地域から持ち込まれた治療法も含まれます。そのためハイルプラクティカーによって得意とする専門分野は異なり、ホメオパシーや鍼灸などひとつに特化するケースもあります。



 
■ハイルプラクティカーの診療所に行ってみた!

 

私自身、興味がありつつも縁遠かったハイルプラクティカーの世界。何かのきっかけがあればと考えていた矢先に出会ったのが、ドイツでハイルプラクティカーとして活動する日本人女性の永洞久美子(ながほらくみこ)さんでした。
昨年、国家資格を取得し、ベテランのハイルプラクティカーの元で研修しながら、自分の患者もとり始めているところでした。そこで研修先の診療所を見学させてもらえないかとお願いしたところ、快諾してもらえました。


訪問したのは彼女が師と仰ぐジャン・バークフォーフェンさんの診療所。


撮影:神木桃子

閑静な住宅街の一角にその診療所はありました。建屋の地階にある診療所にはオフィスとふたつの治療室があり、ひとりで切り盛りしているとは思えないほどすっきりとした印象です。



撮影:神木桃子

バークホーフェンさんはキャリア20年以上の大ベテラン。久美子さんも学んだハイルプラクティカー養成校の講師も勤めているそうです。中国にて伝統医学の手技であるスイナ療法や鍼灸治療を学び、東洋医学の観点も治療に組み入れています。



日本人ハイルプラクティカ―の永洞久美子さんと師匠のバークホーフェンさん
 
撮影:神木桃子


治療室の真ん中に施術ベッドが置かれ、一見すると日本の整体院やエステの施術室のようです。でもよく見ると見慣れない器具や装置が置かれています。



撮影:神木桃子



 これは酸素療法時に血液内に酸素を注入する機械。酸素によって細胞内のミトコンドリアの働きを促し、エネルギー生産を活性化させるそうです。



撮影:神木桃子




訪問した日はひる療法を行う予定のため、元気なひる達もいました。(きゃ〜!)ひるの唾液に含まれる酵素には炎症を抑える働きがあるため、関節炎の治療によく用いられるそうです。ちなみにこれは医療用ひるで、薬局を通して購入するそうです。



撮影:神木桃子




細かく仕切られた棚にはドイツ発祥のホメオパシーの薬が入っています。内服だと個人差が出やすいため、ここでの治療では投与量を正確に量れる注射タイプを用いるそうです。私も医者から内服タイプを処方されることはありますが、注射タイプがあるとは知りませんでした。



撮影:神木桃子

オフィスで目についたのは眼科にあるような器具と不思議な眼のイラスト。これは虹彩診断に使うもので、中央ヨーロッパ発祥と言われている伝統的な診断手法のひとつ。目の虹彩にはそれぞれの身体器官に対応する部分があり、そこを読み取ることで病気の診断を行うそうです。東洋医学とも似た考えがヨーロッパでも独自に発展してきたことに不思議な感覚を覚えました。



撮影:神木桃子
 

 
ハイルプラクティカーの診療所と聞いて抱いていたイメージは、ハーブや薬剤が入ったビンが並んでいて治療は比較的アナログといったもの。それだけに、予想以上に近代的で、提供している治療の幅広さに驚きました。

 
ここでの診察は完全予約制。まずは問診で60〜90分の時間をかけます。その症状が起こっている要因を探り、根本治療を目指すのが目的となります。治療も内容によっては60分ほど要する場合もあるそうです。
ここまで時間をかけて患者によりそうのがハイルプラクティカーの何よりの利点だと言えます。その代わり治療は公的保険の対象外となり、追加保険やプライベート保険に加入していなければ基本的に全額自己負担となります。
  

■日本人ハイルプラクティカーが目指す先には

久美子さんがこの道に進むきっかけとなったのは、日本のIT企業に勤めていた頃に友人が体調を崩してしまったことでした。小さい頃から自然に親しみがあったこともあり、困っている人に自然の力を使ったケアをしてあげたいという想いを抱くようになります。そして2003年にワーキングホリデー制度を利用して自然療法がさかんなドイツに渡ったのです。
渡独時はドイツ語が全く喋れない状態。語学コースに通い、フローリストの仕事に携わりながら実践的なドイツ語を学んでいきました。そんな中で知り合ったドイツ人男性と結婚、ふたりの子宝にも恵まれ、慣れないドイツでの子育てに奮闘しました。
そして2015年、10年越しの夢をもう一度目指してみようとハイルプラクティカー養成校の門をたたくことになったのです。期せずしてシングルマザーとなった久美子さんは、子育てと並行させながら3年間猛勉強を重ねました。そして見事、ドイツ語による筆記試験、口頭試験をパスし、ハイルプラクティカー資格を取得しました。資格を取得したと言っても実務経験がものを言う世界。より多くの治療法を習得すべく、今も研鑽を重ねる毎日をおくっています。




バークホーフェンさんのシンボルマーク・イチョウ葉のイラストが入ったゲーテの詩が飾ってありました。
撮影:神木桃子

 
久美子さんによると、患者の中で最も多いのが、医者の治療に満足せずにハイルプラクティカーに乗り換える人。場合によっては症状を悪化させてくるケースもあるそうです。
医療大国と呼ばれるドイツであっても医者が患者ひとりにさける時間は限られており、細かいフォローアップができていないのが現状です。もちろん医者による治療でないと解決できない病気もあり、全てがダメと言うわけではありません。ただ、ひとりひとりの体質は異なり、同じ症状でもその要因が違う場合もあります。医者とハイルプラクティカーは同一の場所で患者を共有することが禁じられており、現状では接点は少ないそうです。でももし医者とハイルプラクティカーで連携ができれば、双方の強みを生かした総合的なサポートができるのではないか。そう久美子さんは語っていました。





撮影:神木桃子


久美子さんの場合は訪問診療する場合もあるそうです。私も自宅でゆっくり問診や検査の説明をしてもらいました。
 
私自身、久美子さんの患者として問診を受け、これから治療方針の相談へと進んでいく予定です。自分の体質について深く掘り下げて診てもらい、オーダーメイドで治療案を提示してもらえることは何よりの安心感があります。頼もしい健康のサポート役を見つけたことでドイツでの生活もいっそう充実したものになりそうです。
 

永洞久美子さんのホームページ
https://www.nagahora.de/?lang=ja

 

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神木桃子(こうぎももこ)
日本にてオーガニック、食品関連の企業にて勤務後、2014年秋よりドイツ在住。
フリーライターとしてドイツのオーガニック&ローカル事情に関する記事を執筆。
ロゴナ製品ではハーバルトナー<ローズ&アロエ>が好きです!

 @momococojp

 

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